神戸市兵庫区の「新開地」は大正から昭和初期に最盛期を迎え、西の浅草と謳われた歓楽街。
かつては市役所や新聞社もこの地にあり、それらが三宮に移る以前はにぎわいを見せていました。
昭和の趣を残した渋い映画館や居酒屋目当てにおっちゃんたちが集うエリアなのですが、実は喫茶店の数が多い「喫茶店タウン」でもあるので、喫茶店愛好家に足を運んでほしい。
今回は新開地駅から徒歩5分以内の場所にある老舗喫茶店を3軒ご案内します。
新開地の変遷を見つめてきた客船喫茶「エデン」
まずは、喫茶店タウン・新開地の現役最古参「喫茶エデン」をご紹介。
「47都道府県の純喫茶」にも掲載されている兵庫県を代表する喫茶店です。
創業は昭和23年(1948年)。
京都の静香が客車喫茶ならば、エデンは港町神戸にふさわしい客船喫茶。
内装を手がけたのは船舶の室内装備のデザイン・設計・施工を行う業者なので、店内にいるだけで船旅をしている気分になるのは当然のこと。
創業者から引き継ぎエデンの2代目マスターをしているのは息子の堺井太郎さん。
壁には太郎さんが撮影したお客さんの写真が飾られています。どなたも笑顔が素敵。
はじめてエデンに来店したのは2013年頃。
マスターにどう言って店内の写真を撮らせてもらおうか思いあぐねていたところ、太郎さんの方から「写真を撮ってあげる」と声をかけてもらい私も写真のような自然な笑顔になったなぁと思い出しました。
一見さんだからって区別されることはないので、喫茶店めぐりをはじめたばかりの方の最初の一軒としておすすめです。
12時まで注文できるミニサンドモーニングは嬉しい350円。
新開地の文化遺産にぜひお出かけくださいませ。
喫茶エデン・店舗情報
【住所】神戸市兵庫区湊町4丁目2-13
【営業時間】8時〜18時(日・祝は〜16時)
【定休日】不定休
ホットケーキといえば「アキラ」。全メニューが安い!
ふかふかの豚まんが名物の「春陽軒」の近くに店を構える「コーヒの店 アキラ」。
イノダコーヒと同じく、伸ばし棒なしの「コーヒ」が正しい店名。
昭和40年(1965年)創業の常連客に愛されるご近所喫茶です。
メニューを見てびっくり。
ミックスジュースが380円ってかなり安くないですか?
ホットケーキとミーコ(ミルクコーヒー)、合わせて700円を注文。
ホットケーキは少し時間がかかりますと言われましたが、20分ほどでホットケーキが出てきました。
銅板でじっくりと焼き上げた黄金色。
これぞ昔ながらの王道ホットケーキ!と太鼓判を押したくなるふかふかの食感。
ミーコは戦前に新開地で大人気だった大衆喫茶「ホワイト」が生みだしたカフェオレの元祖。
取っ手付きの厚めのグラスで提供されるのがスタンダードですが、アキラではコーヒーカップと同じカップで提供されます。
元高校球児のマスターと常連さんが野球談義に花を咲かせる横で、お腹も心も満たされていました。
コーヒの店 アキラ・店舗情報
【住所】神戸市兵庫区水木通1-3-14
【営業時間】9時半〜23時
【定休日】第2、4、5木曜日
ミナエンタウンの燦然と輝く「光線」
トリを飾るのは、昭和46年に完成したビル内商店街「ミナエンタウン」にある「光線」です。
名画座「パルシネマしんこうえん」側の入り口から入ると、そこは場違いなスナック群。
カラオケスナックで誰かが歌う「そして、神戸」の音が漏れてきました。
「ベタやなぁ」と苦笑いしながら突き進むと、突き当たりに現れるのが同じく昭和46年に開店した「光線」という喫茶店。
初見では入りにくい怪しげな雰囲気ですが気さくなご夫妻が営んでいるので、勇気を出して扉を開けてみましょう。
ガラス張りの店内にUFOのようなオレンジの照明がふわふわと浮かんでいます。
水槽の中の熱帯魚になったような不思議な気分……。
壁に貼られたファッション誌の切り抜きをよく見てみると、藤原紀香??
気になる店名「光線」は字画が良くて、決めたのだとか。
ドリップで淹れてくれたコーヒー(300円)を飲みながら、いつまでも昭和に浸っていたいと思いました。
光線・店舗情報
【住所】神戸市兵庫区新開地1-4-3 ミナエンタウン内
【営業時間】7時半〜19時半
【定休日】第1・第3水曜
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